NUG駐日代表事務所と議連が院内集会 武井外務副大臣も発言

 クーデターから2年となる2月1日、民主派の国民統一政府(NUG)駐日代表事務所とミャンマーの民主化を支援する議員連盟が、「ミャンマーに民主体制、平和と自由を取り戻す」をテーマとした院内集会を参議院議員会館で共催した。  超党派の国会議員で構成する「ミャンマーの民主化を支援する議員連盟」の中川正春会長は、人口の3分の1が飢餓に苦しみ、150万人を超える避難民と多数の死傷者が発生している現状に触れ、日本政府に対して国会で採択された軍事クーデターを非難する決議に則った外交政策を実施するよう改めて求めた。  NUGのソー・バ・ラ・テイン駐日代表は、日本政府に対し1日も早くNUGを正統な政府として承認すること及び8月に予定されている総選挙の実施を認めないよう求め、就労や留学目的で来日しているミャンマー人の多くがパスポートの期限を迎えている現状に触れ、ビザの更新について寛大な処置を要望した。  武井外務副大臣は、困窮者への支援について必要とする人に届くために安全で阻害されない人道アクセスができるよう、日本政府として具体的な人道支援の在り方を検討し、実施していくとの考えを明らかにした。  議員会館の会場では、入りきれない参加者が廊下にまであふれていた。

ミャンマー政変から2年 国軍、権力維持へ着々

 ミャンマー国軍がクーデターで全権を掌握してから2月1日で2年。国軍の市民弾圧は続き、国連によるとこれまでに約2,900人が殺害された。国軍は、8月に実施すると説明する総選挙後も権力を維持しようと、民主化指導者のアウン・サン・スー・チー氏が率いる国民民主連盟(NLD)の排除につながる法律を制定。国軍系政党の勝利に向け、なりふり構わずあの手この手を繰り出している。  国軍が1月26日に発表した新たな政党登録法は、既成政党に60日以内の再登録を義務付け、少なくとも10万人の党員が必要と規定。多数の党員が拘束されたNLDには厳しい内容だ。「テロ組織」と接触した場合は解党されるとも定める。国軍は抵抗する民主派をテロ組織と呼んでおり、恣意的に適用される恐れがある。党員の条件としては「受刑者ではないこと」を挙げる。国軍統制下の裁判所で、汚職などを理由に刑期が計33年となる有罪判決を受けたスー・チー氏らNLD幹部が締め出される可能性が高い。東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国の議員らでつくるASEAN人権議員連盟は「違法な支配者が起草した国軍系政党に都合のいい法律で、民主主義に対する挑戦」と非難した。  国軍は、NLDが改選議席の8割を獲得し国軍系政党に圧勝した2020年11月の総選挙で大規模な不正があったと主張し、クーデターを強行。選挙結果を無効にした。やり直し選挙と位置付ける次期総選挙を前に、国軍系政党に有利な比例代表制への選挙制度変更を目指している。  国軍のミン・アウン・フライン総司令官は「自由かつ公正な複数政党による民主的選挙を実施する」と強調するが、市民の多くは民主派を排除しようとする国軍主導の選挙を受け入れていない。NLDは「国軍は見せ掛けの選挙を実施することで、不正に掌握した権力を正当化しようとしている」と批判、「国軍が行う選挙には反対する」との声明を出した。ミャンマー問題を担当するヘイザー国連事務総長特使も「選挙を実施すれば暴力が増幅され、民主主義復帰が一層困難になる」と懸念を示した。  トゥルク国連人権高等弁務官は「市民が無差別攻撃や裁判なしの死刑、拷問の犠牲にされ、破滅的な状況だ」と指摘。「市民に対する攻撃や人権侵害の実行者は責任を負わなければならない」と訴えている。 (時事通信社提供)

ミャンマーのクーデターを巡る動き

<2020年> 11月8日 総選挙で国民民主連盟(NLD)が国軍系政党に圧勝 <2021年> 1月31日 国軍がクーデターの可能性を示唆、ミャンマー国民に衝撃が走る 2月 1日 アウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相とウィン・ミン大統領ら国民民主連盟(NLD)幹部を未明に拘束。国軍が非常事態宣言を発出し、「軍が国家の権力を掌握した」と宣言。   6日 ヤンゴンなどでNLD支持者による大規模抗議デモ始まる。   9日 首都ネピドーで警察がデモ隊に発砲。   19日 9日に銃撃された女性が死亡。デモ隊に初の犠牲者。   26日 ヤンゴンで邦人ジャーナリストが一時拘束。 3月27日 警察隊による発砲により100人以上の市民が死亡。 4月16日 連邦議会代表委員会(CRPH)、国民統一政府(NUG)樹立を宣言。   24日 東南アジア諸国連合(ASEAN)、暴力の即時停止など5項目で合意。 7月26日 国軍「2020年の総選挙は無効」と発表。 8月 1日 国軍、暫定政府の設置を発表。ミン・アウン・フライン総司令官が首相に。 9月 7日 民主派NUG、国軍側へ攻撃開始を宣言。 10月 7日 欧州議会27か国、NUGとCRPHをミャンマーの代表として認める。 12月 6日 スー・チー氏の裁判で初の有罪判決。禁錮4年の実刑。 <2022年> 3月21日 ASEAN特使、ミャンマー初訪問 7月25日 国軍、民主活動家ら4人に1990年以来の死刑執行を発表。 9月16日 「ディーペーインの虐殺」国軍が学校を空爆し子ども7人を含む13人が死亡。 12月21日 国連安保理、スー・チー氏解放を求める決議を採択。   30日 スー・チー氏の裁判終了、刑期は合計33年に。

「日本も制裁参加を」ミャンマー危機で国連報告者

 ミャンマーの人権問題を調べる国連のアンドリュース特別報告者は1月31日、ミャンマー国軍によるクーデターから2年になるのを前に報告書を公表した。報告書では日本に対し、国軍関係者らに対する制裁網への参加や、軍関係者の即時国外追放を促した。  報告書は、ミャンマー国軍が設置した最高意思決定機関「国家統治評議会(SAC)」について「正統な政府ではなく、承認されるべきではない」と強調。国連加盟国に対し、承認につながる行動を慎み「SACを外交的に孤立させる」よう求めた。  日本や韓国など、ロシアのウクライナ侵攻で制裁を発動しながらミャンマー危機では制裁を見送っている国に対しては「直ちに制裁を科すよう勧告する」と訴えた。さらに日本に関し、防衛省が国軍からの留学生を受け入れている状況に言及。就学期間の終了を待たず、直ちに国外追放するよう要請した。また、政府開発援助(ODA)を含む全ての経済支援がSACの利益となっていないか、再調査するよう提言した。  ニューヨークの国連本部で会見したアンドルーズ氏は「ウクライナ危機で取られている協調的な戦略アプローチが、ミャンマーには欠けている」と指摘。国際社会が一致して行動することが重要だと語った。(時事通信社提供)