ミャンマー政変から2年 国軍、権力維持へ着々

 ミャンマー国軍がクーデターで全権を掌握してから2月1日で2年。国軍の市民弾圧は続き、国連によるとこれまでに約2,900人が殺害された。国軍は、8月に実施すると説明する総選挙後も権力を維持しようと、民主化指導者のアウン・サン・スー・チー氏が率いる国民民主連盟(NLD)の排除につながる法律を制定。国軍系政党の勝利に向け、なりふり構わずあの手この手を繰り出している。

 国軍が1月26日に発表した新たな政党登録法は、既成政党に60日以内の再登録を義務付け、少なくとも10万人の党員が必要と規定。多数の党員が拘束されたNLDには厳しい内容だ。「テロ組織」と接触した場合は解党されるとも定める。国軍は抵抗する民主派をテロ組織と呼んでおり、恣意的に適用される恐れがある。党員の条件としては「受刑者ではないこと」を挙げる。国軍統制下の裁判所で、汚職などを理由に刑期が計33年となる有罪判決を受けたスー・チー氏らNLD幹部が締め出される可能性が高い。東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国の議員らでつくるASEAN人権議員連盟は「違法な支配者が起草した国軍系政党に都合のいい法律で、民主主義に対する挑戦」と非難した。

 国軍は、NLDが改選議席の8割を獲得し国軍系政党に圧勝した2020年11月の総選挙で大規模な不正があったと主張し、クーデターを強行。選挙結果を無効にした。やり直し選挙と位置付ける次期総選挙を前に、国軍系政党に有利な比例代表制への選挙制度変更を目指している。

 国軍のミン・アウン・フライン総司令官は「自由かつ公正な複数政党による民主的選挙を実施する」と強調するが、市民の多くは民主派を排除しようとする国軍主導の選挙を受け入れていない。NLDは「国軍は見せ掛けの選挙を実施することで、不正に掌握した権力を正当化しようとしている」と批判、「国軍が行う選挙には反対する」との声明を出した。ミャンマー問題を担当するヘイザー国連事務総長特使も「選挙を実施すれば暴力が増幅され、民主主義復帰が一層困難になる」と懸念を示した。

 トゥルク国連人権高等弁務官は「市民が無差別攻撃や裁判なしの死刑、拷問の犠牲にされ、破滅的な状況だ」と指摘。「市民に対する攻撃や人権侵害の実行者は責任を負わなければならない」と訴えている。 (時事通信社提供)