Dr.井上のミャンマー新型コロナウィルス最新情報

今週から新型コロナウイルスの最新情報を提供することになりました Yangon Japan Medical Centre院長の井上です。よろしくお願いします。   1週間のまとめという観点で情報を見てみます。 患者数  毎日の患者数はいろいろなところで報告されたり、グラフ化されて一喜一憂していると思います。視点を変えて、月曜日から日曜日までの1週間の患者数の推移を表にしてみました。  8月下旬から今回の第2波が始まりましたが、ヤンゴンの陽性者数は週ごとに倍々ゲームで増え続け10月5日の週に最高の8,217人に達しました。9月末からロックダウンを始めたのが功を奏したのかその後は多少減りましたが、10月12日の週が6,686人、10月19日の週が6,612人とまだそれほど減っていません。    最近は経済を優先するためか、選挙のためか、自粛疲れのためかわかりませんが、やや制限を緩める方向にシフトしている感じですが、まだまだ安心できる状態ではありません。    ヤンゴン以外の患者数は当初はラカイン州がほとんどでしたが、最近はラカイン州は収まってきています。しかしヤンゴン以外の陽性者数はまだ増え続けており、とくにバゴー地区はかなり増えています。陽性者のほとんどがヤンゴンだからと言って、他の地域は解除と言えないことはこれでわかります。   死亡者数  最近3週間の死亡者数は230~240人程度で少なくとも増えてはいません。悪くはないのですが減ってきてもらいたいものです。   治療中患者数  新型コロナの特徴の一つは急激に感染者が増えて医療崩壊を引き起こすことがある点です。医療崩壊とは全体の患者数が増えすぎたため、普段は助かる患者が助からなくなる状態です。通常は対応可能な心筋梗塞、脳梗塞などの緊急患者をきちんと診れなくなります。診療拒否や対応の遅れが発生します。結果としてコロナの患者だけでなく、その他の病気の患者も多数亡くなることになります。    この医療崩壊が起きるかどうかの指標としては治療中患者数があげられます。全陽性患者数から退院患者数と死亡患者数を引いた人数が現在治療中の患者数です。ミャンマーは全国で55,000床しかなく、医師は日本の1/10、看護師は1/50しかいないのでそれほど大量の患者をさばききれません。ヤンゴンにある病床数は調べきれませんでしたが、1万程度ではないかと思われます。そのうちコロナの治療を行っている国立病院の病床数はさらに少ないことは間違いありません。  治療中患者数は10月初めには1万人を越えてさらに増えています。政府はサッカー場にテントを作ったり既存の学校などの施設を軽症者、隔離患者用の施設に転用して急激に増えている陽性者に対応しています。今のところ10月22日の20,831人が最高ですがまだはっきりとした減少傾向がみられません。まだ死亡者数の急増はみられませんが、コロナを治療している医療スタッフが防御服を着て疲労している写真をみました。現在欧州は第2波がきており、ミャンマーと大して人口が変わらないフランスで1日に5万人の陽性者が出ているとの記事がありました。そんなに感染が拡大したら医療崩壊になるのは確実です。    現状でも日本にいるのと同様な療養環境や医療環境で治療を受けることは困難です。少なくとも治療中患者数が1万人を切って医療施設に余裕ができるまでは、新型コロナにかからないように十分に気を付けてください。 執筆者プロフィール 井上 聡(いのうえ そう) Yangon Japan Medical Centre院長 慶応義塾大学医学部卒業。外科専門医、消化器内視鏡専門医。2018年7月よりヤンゴン在住。 Yangon Japan Medical Centre 09-7777-08448 外来、健診、予防接種。海外旅行保険対応。 クレジットカード可。