サウジアラビアで足止めのミャンマー産水産物の輸出コンテナ、一部に輸入許可

 中東サウジアラビアの港2か所でミャンマー産の水産物を積んだコンテナ30本分が足止めされている問題に関し、10本分の輸入が許可されたことがわかった。ミャンマー水産物生産・販売業協会(MPEA)が発表したもの。MYANMAR TIMESが伝えた。  発表によると、足止めされているコンテナ30本にはミャンマー産の淡水養殖魚が積み込まれており、コンテナ1本あたりの輸出価格は6万~8万米ドルだという。サウジアラビアの食品・飲料検査局(SFDA)は2018年4月からミャンマー産淡水魚の輸入を禁止していたが、2020年8月31日にミャンマーの加工工場1か所に対してのみ輸入を許可するとWEBサイト上で発表した。しかし、輸入された水産物はSFDAが認可していない工場で加工されたものが多く含まれていたため、輸入許可が下りなかったという。  SFDAが認可したミャンマーの加工工場は19工場のうち1工場のみで、10月15日に3工場が追加で認可されたため、コンテナ30本分のうち10本分が輸入許可された。残りの20本については輸入ができない状態が続いている。 関連記事:サウジアラビアでミャンマー産水産物の輸出コンテナが足止め

Dr.井上のミャンマー新型コロナウィルス最新情報

先週はタジンジュの5連休があって、車の数や外出者の数も増えてきているように思えますが、新型コロナウイルスの感染状況はどうなっているでしょうか? 患者数 発表されているヤンゴンの陽性者数が減ってきたように思えますが、10月26日~11月1日の週間陽性者数は6,800人で、1週間前、2週間前と比べて減っているどころかむしろ少し増えています。その他の地区の陽性者数は2,118人でやっと増加が止まったところです。これはロックダウンを行ったにもかかわらず、ヤンゴンでもその他の地域でも抑え込みに成功していないということです。 11月2日の発表では、ヤンゴンの患者数は524人でした。相当減ってきたと思うかもしれませんが、連休の最終日のデータに喜んではいけません。   死亡者数 死亡者数は一週間に171人で少し減ってきたかもしれません。しかしまだ1日に20人以上が亡くなっており、落ち着いたとはいえません。   治療中患者数 治療中患者数は先週計算式を間違えて異なった数字を紹介してしまいました。10月22日がピークなのは変わりませんがその時の患者数は19,859人でした。その後も19,000人前後をうろうろしており、減ってきていません。これは株式市場でいうところのもみ合い状態です。市場ではいったんこの状態を抜け出すと急激に上がったり下がったりすると言われています。 なんとなく1日の陽性者数2,000人ぐらいがピークだったのかなと安心している人が多いかもしれませんが、人口が同じぐらいのフランスなどでは1日に5万人もの陽性者が見つかって、再度ロックダウンが始まっています。このもみ合いの状態から上に流れが傾くと感染者数が急激に増える可能性があります。東南アジア諸国では欧米と異なりそれほど感染が拡大せず何らかの要因(Factor X)が存在するのではないかと言われていますが、インド、バングラデシュでは新型コロナウイルスが大流行しているので、このまま患者数が急激に増えることがないと決めつけることはできません。 新型コロナはインフルエンザと比べると感染力は低いが、死亡率が高いと言えます。インフルエンザは子供にも影響がありますが、新型コロナは子供にはあまり影響がありません。新型コロナの問題点の一つはインフルエンザには見られない医療崩壊を起こすことがあるという点があげられます。ミャンマーにおける現在の治療中患者数は19,000人で、テントを建てたるなどしてなんとかやりくりしている状態です。しかし、新規感染者が毎日5,000人も増えたりしたら、ヤンゴンは完全に医療崩壊になります。まだ安心しないでください。   ミャンマーは10月30日から外務省の「国、地域別海外安全情報」で感染症危険レベルが3に格上げされました。レベル3は渡航中止勧告です。引き上げに伴い、ミャンマーから日本へ渡航するミャンマー人を含む全ての外国人に対して、ミャンマーから出発72時間前のPCR検査による出国前検査証明の提示や、本邦入国時の新型コロナウイルス感染症検査(抗原検査)の受検が求められます。(ただし日本国籍の方は、ミャンマー出国前のPCR検査及び出国前検査証明の提出は不要です。) 執筆者プロフィール 井上 聡(いのうえ そう) Yangon Japan Medical Centre院長 慶応義塾大学医学部卒業。外科専門医、消化器内視鏡専門医。2018年7月よりヤンゴン在住。 Yangon Japan Medical Centre 09-7777-08448 外来、健診、予防接種。海外旅行保険対応。 クレジットカード可。

JETRO STREAM~日系企業動向、ミャンマーの新潮流を読み解く~

コロナ禍におけるミャンマーの経済動向(その2) ~今後の見通しは~  前回は、コロナ禍におけるミャンマーの経済状況について、国際機関によるGDP 経済成長率予測、外国直接投資動向、貿易統計を検証しました。今月は、その他の参考指標を概観すると共に、今後のミャンマーの経済見通しについて述べたいと思います。 自動車販売は順調に推移  耐久消費財の売れ行きに関する月次指標として、日系メーカー等が加盟するミャンマー自動車協会(AAM)の新車販売統計が参考になります。新型コロナウイルスの感染予防のため、車両登録を行う道路交通管理局(RTAD)が3月26日から業務を停止したことで、4月の販売台数は0台でありました。5月11日からRTAD が再開したことから、5月~8月期は前年同期比12.6%増の7,734台となり、単月の販売推移を見ても、5月1,253台、6月1,978台、7月2,258台、8月2,238台と回復傾向にありました。しかしながら、新型コロナウイルスの第二波の到来により、RTADは9月14日から再び閉鎖しており、新車登録ができなくなっております。消費者もメーカーも第二波収束後の早期再開を止む無く待っている状況にあります。 外国直接投資は順調に推移  ミャンマー投資委員会(MIC)によれば、2019年10月~2020年7月期の外国直接投資認可額は、既に前会計年度(約42億ドル)を上回る約50億ドルと順調に推移しています。金額的には香港企業による電力投資やシンガポール企業による不動産投資などが上位を占めていますが、件数ベースでは219件が認可され、その約4分3が製造業への投資となっています。直近のコロナ禍においては、シンガポールのセムコープがレーグーにて436ヘクタールのインダストリアルパークの開発、日本のイオンモールは、ダゴンセイカンにおいて、2023年の開業を目指して第1号店の出店をそれぞれ発表しています。既述の製造業投資や各種大型プロジェクトは将来のミャンマーに対する投資家の信認の表れと見ています。 不動産市況はやや減速傾向  不動産サービスのコリアーズ・インターナショナルによれば、2020年第2四半期のヤンゴン全体のオフィス占有率は対前期比で1.5%減、対前年同期比5.7%減の65.3%といった調査報告書を発表しています。また、2020年第2四半期のヤンゴン全体の小売施設の平均占有率は対前期比1.3%減の88%としています。数値的にはやや減速傾向が見られますが、同社によれば、ヤンゴンにおける主要な不動産開発案件の取り止めはないとしています。 今後の見通し  このようにミャンマーでは、4月から5月にかけての新型コロナウイルスの第一波の到来とその対策を経つつ、足下の各種経済指標では回復傾向にあります。国際機関の予測に従えば、2020年度は引き続きプラス成長を維持する見込みとなっています。  しかしながら、8月18日以降、ラカイン州をエピセンターとして新型コロナウイルスの感染拡大が全国に広がり、ヤンゴン管区では9月21日からほぼ全域において、一部の業種の社員を除き自宅待機命令が出状されています。  そうした中で、COVID-19予防・制御・治療国家中央委員会の委員長を務めるアウン・サン・スー・チー国家最高顧問は、新型コロナウイルスの感染予防と経済活動の両輪が必要不可欠であるとの認識を持ちつつ、今は、人命を最優先に、国民に「忍耐」を呼び掛け、これ以上感染が拡大しないよう、人の移動を最小限に留める対策を進めています。  こうした措置が長引けば、実体経済へのマイナスの影響が出るのは必至ですが、ミャンマーで働かせて頂いている私たちも今は我慢の踏ん張りどころです。 (2020年11月号掲載) 田中一史(たなか かずふみ) 日本貿易振興機構(ジェトロ)ヤンゴン事務所長。主にアジア経済の調査や企業の海外展開支援業務を担当。海外勤務は、マニラ事務所調査ダイレクター、サンフランシスコ事務所北米広域調査員、バンコク事務所次長を歴任。2017年12月より現職。