JETRO STREAM~日系企業動向、ミャンマーの新潮流を読み解く~

コロナ禍における新たな事業が始動(その1) ~サプライチェーンの多元化へ~   国際旅客機の乗り入れや入国ビザの新規発給などの各種入国制限措置が7月31日まで再延期されました。日本及び第三国からの人の往来が規制される中、従来型のFace to Face の仕事ができず、ジェトロも大きく事業の主軸を移すべく対応に入っております。  本稿では、コロナ禍におけるニューノーマル(新常態)に対応した幾つかの動きをご紹介します。 サプライチェーンの多元化に向けた日本産業界の動き  コロナ危機で露呈した企業活動の脆弱性として、サプライチェーンの特定地域・拠点への過度な依存といった指摘があります。チャイナ・プラス・ワンやタイ・プラス・ワンといった動きは相当前からありましたが、基本的には人件費を抑えるために人件費の安い国に生産工程の一部を移管し、アジア内での分業体制を見直す中で、サプライチェーンの構築ができ上がっておりました。そのため、ミャンマーでも、今回のコロナ危機では、中国やタイからの部品調達が遅れ、完成品の納期が間に合わず、大変だったという声も聞かれます。既に日本企業の間では、生産拠点の分散や代替生産拠点の増強、さらには供給ルートの複線化に関する議論が始まっており、ジェトロでもバリューチェーンの強靭化に向けた設備導入のための補助事業や実証事業を始動させます。この流れの中で、ミャンマーをどう取り込むか、これまでアジア内のサプライチェーンに取り組まれてこなかったミャンマーにとっては、新たなチャンスが到来するのではないかと期待しています。 ポストコロナのルール形成  今年はミャンマー日本商工会議所(JCCM)会頭がASEAN 日本人商工会議所連合会(FJCCIA)の会頭となり、7月にはヤンゴンにおいて「FJCCIAとASEAN事務総長との対話」をホストし、これまでASEAN 6の関心を中心に議論が展開されてきた対話と一線を画し、ミャンマー等後発ASEAN の声をASEAN の経済大臣等にしっかり届けることになっておりました。しかし、コロナ禍の影響によりヤンゴン開催が延期となってしまいました。  今年のASEANは、ベトナムが議長国でありますが、未曽有の危機に対する経済強靭化計画の下、ニューノーマルに求められる新ルールの形成やシステム改革へのFJCCIA 提言が主眼に置かれる予定です。  ルールや基準・認証というと、欧州が主導的な立場のイメージはあるものの、ASEAN 最大の投資国は日本であり、日本は主要貿易相手国でもあります。ルール形成に日本はもっと積極的に関わっていい分野でもあります。ミャンマーでは、コロナ危機前の今年1月、日本品質保証協会(JQA)と連携し、ミャンマーの食品加工産業界を対象に食品の国際標準化のセミナー、工場診断等を行っていたところです。 <次稿に続く> (2020年8月号掲載) 田中一史(たなか かずふみ) 日本貿易振興機構(ジェトロ)ヤンゴン事務所長。主にアジア経済の調査や企業の海外展開支援業務を担当。海外勤務は、マニラ事務所調査ダイレクター、サンフランシスコ事務所北米広域調査員、バンコク事務所次長を歴任。2017年12月より現職。

ADBがミャンマーの水道水供給と農村電化事業に3億米ドル超を融資

 アジア開発銀行(ADB)が、ヤンゴン市内の水道水供給事業と地方農村電化事業に対し、3億米ドル(およそ320億円)超の融資を行うことがわかった。7Day Dailyが伝えた。  関係省庁によると、ヤンゴン市内の水道水供給事業に1億8,000万米ドル、地方農村電化事業に1億7,127万米ドルが使用される。水道水事業はヤンゴン管区レグー郡のガモーイェ貯水池から取水について、現行の運河に代わり大型水道管による取水に変更する。また、地下トンネル、送水ポンプ、変電所などの施設が新たに建設される。これにより、ガモーイェ貯水池から1日あたり1億8,000万ガロンの水道水がヤンゴン市内に供給される予定。プロジェクトは2020年12月から2025年12月までの5年計画で実施される。なお、ヤンゴン市内では2025年に地下水のくみ上げが禁止されることになっている。  農村の電化事業は、エーヤワディ、バゴー、マグェー、カレン州において66,000ボルト、33,000ボルトの高圧送電線を整備し、変電所を44か所増設する。これにより、40万世帯に電気が供給される見込み。ミャンマー政府は、2030年に国内電化率を100%にすると計画している。