ミャンマー国軍 孤立回避へ中ロと関係強化

 クーデターで権力を握ったミャンマー国軍に反発する西側諸国は、経済制裁を科すなどして市民弾圧を続ける国軍への圧力を強めている。国軍は孤立を回避しようと欧米と対立するロシアや中国に接近。ロシア側と軍事・原子力協力をめぐり話し合うなど、関係強化を目指している。  国軍のミン・アウン・フライン総司令官は7月中旬、ロシアを1週間にわたり訪問した。国営原子力企業ロスアトムのリハチョフ社長と原子力の平和利用について協議。ロスアトムによると、ミャンマーにおける技術者育成などでの協力をうたう覚書を交わした。  総司令官は、ロシアのフォミン国防次官との会談では軍事技術協力や合同軍事訓練に関して意見交換。国営宇宙企業ロスコスモスとは科学技術開発を話し合った。  7月初旬には、中国の王毅国務委員兼外相がミャンマーを訪れ、国軍の「外相」であるワナ・マウン・ルイン氏と両国の「伝統的な友好関係」を確認。「中国・ミャンマー経済回廊」の建設加速で一致した。王氏はミャンマー産農産物の輸入を拡大し、貧困撲滅策を支援する考えも伝えた。  ミャンマー問題に詳しいタイ上院外交委員会のコープサック顧問は、ロシアが国軍への関与を強めれば、ミャンマーがウクライナと同様、欧米とロシアの対立要因となる恐れがあると指摘。一方、ミャンマーの民主派は「国軍が中国からの投資を軍事目的で利用している」と懸念を示し、「中国企業は国民の敵を支援していると見られている」と警告した。 (時事通信社提供)

ミャンマー政変から1年半 ASEANの仲介手詰まり

 ミャンマーで国軍がクーデターを起こし、実権を握ってから8月1日で1年半。国軍の強権支配は続き、人権団体によると殺害された市民は2,138人となった。東南アジア諸国連合(ASEAN)は早期正常化へ主導的役割を果たそうと各勢力間の仲介を目指しているが、国軍の強硬姿勢に阻まれ、手詰まり感が漂っている。  ミャンマー国軍は7月25日、民主化を迫る国際社会に挑むかのように、活動家ら4人の死刑を執行したことを明らかにした。顔に泥を塗られた形のASEANは「大いに非難されるべきだ」とする議長声明を発表。内政不干渉が原則のASEANとしては異例の厳しい表現でとがめた。  ASEANのミャンマー担当特使を務める議長国カンボジアのプラク・ソコン副首相兼外相は、3月と6~7月の2回にわたって現地を訪れ国軍のミン・アウン・フライン総司令官らと会談した。しかし、国軍が拘束している民主化指導者アウン・サン・スー・チー氏との面会は認められず、大きな成果は上がっていない。  ASEANは暴力停止など「5項目の合意」の履行を国軍に促している。加盟各国の政治家らでつくるASEAN人権議員連盟は、合意に特使と全当事者の面会が含まれるにもかかわらず、国軍側とのみ会談するプラク・ソコン氏を「最も深刻な犯罪の責任を負う非合法組織に正統性を与えている」と批判した。  プラク・ソコン氏は、ミャンマー訪問では「人道支援で進展があった」と強調する一方、「ミャンマーの紛争は70年に及ぶ複雑な歴史と政治に深く根差している」と指摘。「解決に近道はない。魔法のつえも秘薬もない」と語り、一歩一歩取り組むのが現実的だと理解を求めている。  カンボジアの議長国としての任期が満了する年末まで5か月。議長国の交代に伴い特使が代われば、仲介努力が後戻りしかねない。ミャンマーのイスラム系少数民族ロヒンギャの迫害問題を担当した国連調査団のマルズキ元団長は、事態の早期解決には「同じ人物が特使を続ける必要がある」との見解を示した。 (時事通信社提供)