もし、ミャンマーに第3波が来ると…
Dr.井上のミャンマー新型コロナウィルス最新情報

先週の新型コロナの流行状態を分析します。 陽性者数 先週のヤンゴンの陽性者数は6,265人で微減です。ヤンゴン以外の陽性者数は3,864人と過去最高を記録、全国の合計は10,129人と1万人を超えて、これも過去最高となりました。特にマンダレーの週間陽性者数は1,378人と先週からさらに266人増えており、ヤンゴン以外の陽性者のほぼ半分を占めています。一方、他の地域はそれほど増えておらず、ラカイン州は毎日20人程度と流行が収まり安定していると言えるでしょう。まるで、東京と大阪が多い日本と同じような感じです。マンダレーにおける11月30日の感染者数は301人と過去最高を更新しており、もはやヤンゴンと同様に抑え込むのは無理な段階に達したように思われます。先週末は4連休で、検査が抑制されていた可能性がありますので、実態はもっと多いかもしれません。最近は、日本人から身近なミャンマー人もしくはその家族がコロナに感染したという話を聞くことが増えてきました。とはいえ、最近1か月のヤンゴンでの陽性者数は毎日900人ぐらいですので、これで安定していると言えるのかもしれません。 死亡者数 週間死亡者数は165人で、これも最近1か月ぐらい安定しています。地域別の死亡者数は毎日は発表されていないのですが、保健スポーツ省の資料によると、11月20日の時点でのマンダレーの死亡者はたったの17人です。マンダレーで陽性者数が急に増えてきたのは11月18日ですからこれからマンダレーでの死亡者が増えてくるのかもしれません。既にコロナによる死亡者が人口が2倍である日本の2,100人に近付きつつあるので、そのうち日本の死亡者数を超えてしまうと思われます。   治療中患者数 11月25日の19,487人まで治療中患者数は増え続けたのですが、ここ数日は18,000人台で落ち着いています。ヤンゴン以外の地域の陽性者数が増えているということは、当然ヤンゴン以外の地域の治療中患者数が増えていることを意味しますので、ヤンゴンでの治療中患者数は少し減ってきているのかもしれません。 日本では11月になってから第3波が来て、陽性者数が安定していた時の500人ぐらいから2,000人オーバーに増えています。もし、今のヤンゴンが安定期であるとすると、今後第3波が来て陽性者数が4倍に増えたとしたら、ミャンマーは完全に医療崩壊になります。全国に55,000床しかベッドがないのに治療中患者が8万人になったしたら、死亡者が何人になるのか想像もできません。日本やヨーロッパで患者が急増しているのは、冬になり気温が下がってきていることも関係していると言われています。今後あまり気温が下がらないミャンマーは多少条件が良いと言えますので、同じように第3波が来るとは限りません。しかし、対策が緩んでいる最近の状況を見ると、このまま安定するとは思えません。   日本では、1日の陽性者数が2,000人を超えて、入院治療を要する者が20,000人、重症者が500人で一部では医療機関の空き病床が切迫しているとか、「Go To」を中止するなどと言われていますが、ミャンマーで陽性者数が2,000人を連日超えるようになったら死者は日本と比べられないぐらい増えると思われます。ミャンマー政府にはさじ加減を間違えないように希望します。 執筆者プロフィール 井上 聡(いのうえ そう) Yangon Japan Medical Centre院長 慶応義塾大学医学部卒業。外科専門医、消化器内視鏡専門医。2018年7月よりヤンゴン在住。 Yangon Japan Medical Centre 09-7777-08448 外来、健診、予防接種。海外旅行保険対応。 クレジットカード可。

JETRO STREAM~日系企業動向、ミャンマーの新潮流を読み解く~

アジア・デジタル・トランスフォーメーション(ADX)促進事業が始動  アジアにおけるデジタル化の本格到来の中、日本政府が肝いりで推進しているアジア・デジタル・トランスフォーメーション(ADX)促進事業の第1回目の公募が行われ、23件の支援プロジェクトが採択されました。 日・ASEAN企業の連携によりDXを推進  本事業は、日本企業を対象にASEANにおいて、デジタル技術を活用し、現地企業や現地政府と協働して新規ビジネスの組成を図ることを目的としています。多数の公募の中、ミャンマーにおける案件は4件が採択され、タイの7件には及ばなかったものの、ASEANでは2番目に多い実証プロジェクトが始まります。特にスマートフォンの普及率がほぼ100%といっても過言ではないミャンマーにおいては、多くの国民が既にデジタル技術に慣れ親しんでおり、いろいろな可能性を秘めています。 医療から人材育成まで幅広いプロジェクトが始動  今回、ミャンマーで採択された4件の実証プロジェクトをご紹介します。まず、医療・ヘルスケア分野では、フジタ医科器械が排泄機能障害の改善リハビリの実践方法や効果、データ収集可能な機器を医療施設に導入し、普及事業を行います。その背景には、ミャンマーでも急激な都市化に伴う食習慣の変化から成人病の罹患者や結直腸・直腸がん患者が増加しており、医療現場においては、患者予後やQOLの改善に資する治療が求められています。  農業分野では、ARUN Seed がゴマをターゲット作物とし、農業従事者の市場アクセス改善のためのプラットフォーム「e-Marketplace」を構築し、AI 画像認識モデルに基づく農産物のQR コードを導入し、品質・トレーサビリティの確保を図ります。  観光分野では、日本工営が2019年7月に世界遺産登録されたバガンにおいて、早期の観光需要回復に向けて、デジタルツールを活用し、観光客が旅行先でのコロナ感染対策状況を認識し得る仕組みの開発・体制の構築を図ります。  観光分野では、日本工営が2019年7月に世界遺産登録されたバガンにおいて、早期の観光需要回復に向けて、デジタルツールを活用し、観光客が旅行先でのコロナ感染対策状況を認識し得る仕組みの開発・体制の構築を図ります。  人材育成分野では、スタディストが製造業のみならず、飲食業・サービス業等の労働生産性の向上に向けて、従来のテキスト・集合研修・OJTを駆使した教育スタイルではなく、デジタル技術を活用しながらビジュアルベースの標準作業手順書(SOP)を、遠隔運用も可能となる形で提供します。  各プロジェクトの概要はこちらで閲覧できます。今回は第1回目の公募でしたが、いずれ第2回目の公募が始まります。ジェトロとしても、各企業様と連携しながら、デジタル技術を活用し、ミャンマーにおいても新たなビジネスモデル構築のお手伝いをしたいと考えています。 (2020年12月号掲載) 田中一史(たなか かずふみ) 日本貿易振興機構(ジェトロ)ヤンゴン事務所長。主にアジア経済の調査や企業の海外展開支援業務を担当。海外勤務は、マニラ事務所調査ダイレクター、サンフランシスコ事務所北米広域調査員、バンコク事務所次長を歴任。2017年12月より現職。