なるほど! 納得!! ミャンマー法 ~駐在弁護士が気になる“あれこれ”を解説~

工業団地法の概要(2) ティラワ、MICに続く第三の投資枠組みとなるか?  前回に続き、工業団地法の概要についてご説明します。  同法では、中央委員会、地方委員会、工業団地管理委員会の3つの階層の機関を作ることを定めています。また、工業団地の設置を行い、工業団地のインフラの建設、運営を行い、工業団地内の保守を行う者を開発業者、工業団地の特定の区画に投資を行う者を投資者としています。 工業団地設置の手続  新たな工業団地の設置については、以下の手続により行われることが規定されています。 ①開発業者又は管区政府等が、地方委員会に提案書を提出 ②提案書の提出を受けた地方委員会は、その内容について検討を行い、意見を付して中央委員会に提出 ③中央委員会は、地方委員会から提出された提案書について検討の後、意見を付して連邦政府に提出 ④提案された場所に工業団地を設置するか、連邦政府がその許否を判断する。  工業団地の設置が決定された後、地方委員会は開発業者を選定しますが、かかる選定は法律に従い、入札の方法によることが求められています。  選定に際しては、a.ミャンマー及び国民に利益をもたらすことができること、b.プロジェクトを迅速に実施することができること、c. 透明性、d. 工業団地ビジネスを成功させる能力を有することという要素が考慮されます。 既存の工業団地についての適用  例えば、ミンガラドン、ラインタヤ、タケタといった既存の工業団地については、工業団地法によりどのような影響を受けるのでしょうか。  まず、既存の工業団地についても、地方委員会は、a. 進行中の開発計画の発展、b. 必要な計画の策定し、義務を定め、中央委員会の承認を取得すること、c. 新たな投資に必要な建物又は構造物の場所及び建築について決定、審査、承認を行うこととされています。  また、既存の工業団地についても、計画通りに投資が実施されなかった場合、土地価格の10% を毎年納付することが義務付けられ、これを支払わなかった場合には、土地使用権の取消の処分が規定されています。  このような既存工業団地としての規制のみならず、連邦政府は、既存の工業団地について種類によって分類し、工業団地法の適用される工業団地として公示することとされており、工業団地法に従えば、既存の工業業団地でも、工業団地法に基づく工業団地として指定されることができるとされています。  これらの規定は、現状、ミャンマーでは、少なくない数の工業団地が実際上は投機目的等で開発されずに放置されている現状に着目し、このような放置されている土地の開発を促すためのものと見ることもできるでしょう。 (2020年9月号掲載) 甲斐史朗(かい ふみあき) TMI総合法律事務所パートナー(ミャンマー担当)。日本国弁護士。早稲田大学政治経済学部政治学科、ロンドン大学LLM卒業。2015年1月よりヤンゴンオフィス駐在。 TMI総合法律事務所 +95(0)1-255-047 弁護士約420名、弁理士約80名を擁する日本の五大法律事務所の一つ。 ミャンマーには、日本の法律事務所として最初に進出し、2012年にヤンゴンオフィスを開設。