カレン民族同盟(KNU)第5旅団報道官 パドー・マンマン 氏(P.3)

軍との停戦か、抗戦か一枚岩ではないKNU

永杉 KNUは現在のミャンマー国軍についてどう考えていますか。また、その内容はどのようなものでしょうか。

マンマン まずKNUの中でも、和平や自治に対してのアプローチに違いがあり、ふたつの流れがあることを説明させてください。ひとつは国軍との間で停戦合意を結んで、共存していこうというグループ。もうひとつは、停戦は時期尚早というグループです。KNUの中でも第2、第5旅団は後者の考え方です。

永杉 第5旅団報道官のマンマンさんも停戦には否定的なのですね。国軍との停戦派と抗戦派、KNUではどちらが主流なのでしょうか。

マンマン 国軍を信じるのは難しいですからね。2012年のKNU総選挙では、停戦派であるソー・ムー・トゥ・セィ・ポー議長が勝利を収めました。彼らが主流派ではあります。だから我々はいわば、KNUの野党ですね。

永杉 組織内部に意見の大きな違いがあることを、私が書いても問題ないのですか。

マンマン 事実ですから(笑)。それにこれは国軍の分断統治策の結果でもあるのです。国軍はムー・トゥ・セィ・ポー氏に圧力をかけて停戦に持ち込ませたのです。そしてNCA(全土停戦合意文書)にサインさせたのです。

永杉 2015年のことですね。国軍は8つの少数民族グループと停戦合意し、その中にはKNUも含まれていました。しかし、その後も国軍との対話が進むことはなく、2021年にはクーデターが起きさらに問題が複雑化しました。そしてKNUも含めた10の少数民族グループはNCAを破棄し、市民の弾圧を続ける国軍との和平交渉を打ち切っています。

マンマン とはいえ、現行のKNU指導部はまだNCAに沿って、国軍と妥結しようという姿勢を持っています。しかし、そもそも2008年に国軍が定めた憲法に問題があるのです。

永杉 議席の1/4は軍人が占める、治安に関わるポストは国軍が任命するといった内容で、国軍の影響力が非常に大きなものとなる憲法ですね。

マンマン ご指摘の通りです。国軍と折り合うということは、その2008年憲法を認めることにもなり、それは許容できません。

永杉 他の少数民族グループも2008年憲法を認めない方針です。加えてクーデター後に民主派が樹立したCRPH(連邦議会代表委員会)やNUG(国民統一政府)も同様です。しかし今後、国軍とどう向き合うのか難しいですね。

マンマン もしKNUがこのような姿勢を続けるようなら、私は今後KNUの役職に就くことはないと思います。残念ながら、KNU内の意見の相違は我々の抱える大きな問題です。

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