<2016年4月号>優秀な人材、どうしたら採れる?ヤンゴン就活事情
【特集】優秀な人材、どうしたら採れる?ヤンゴン就活事情 KDDI と住友商事が参画するMPT ジョイントオペレーションは1月30~31日、採用に直結する独自のジョブフェアを開催した。通信最大手の採用イベントとあって、会場のパークロイヤルホテルには1日千人以上が詰めかけた。 まず求職者の希望やキャリアを加味して各部門に振り分け、一次面接を行う。これを通過すると、各部門の幹部がじっくりと二次面接を実施。最終決定は後日行うが、実質的に採用者はこの日に決まっていると言っていい。流れ作業のように多数の求職者と面接ができるので、大量採用が必要な同社には適している。 同社にとっては初めての試み。ある幹部は「独自イベントなので、目的意識がはっきりした人が多かった。いい人材が数人いたので、うちの部署でも採用したい」と話していた。 三井住友銀行ヤンゴン支店は1月26日、新入行員6人の入行式を行った。人生の節目の儀式を行うことで、同銀の一員であると自覚してもらうのが目的。この日の式典には出身校の学長らが出席。式に招待された父母らも子どもの成長を誇らしげに見守った。女性新入行員は「国際ビジネスの第一線の知識を覚えられることがうれしい」と期待を膨らませる。 同行は奨学金を支給しているヤンゴン大、ヤンゴン経済大、ヤンゴン外国語大の3校に限定して新卒を募集。人材紹介業者の協力を得ながら約100人の応募から2回の面接試験で選抜した。赤木伸康支店長は「思っていたよりもずっと優秀な人材が採れた」と笑顔を見せる。 入行から1年半は研修期間で、財務や法人金融など4つの部門で一通りの銀行業務の経験を積む。その後、各部署に配属されて専門性を身につける仕組みだ。同支店幹部は「研修やキャリアパスを明確にすることで、長く勤めてもらう狙いがある」と話している。 人事担当者に聞く 求められる問題解決型人材 MPTジョイントオペレーション 土屋宏樹ダイレクター MPT ジョイントオペレーションでは、年間数百人の新規採用が必要になります。人材紹介業者を利用するほか、ジョブフェアなどで広く人材を集めています。 重視するのは、3つの点です。まずは人物。多くの人と一緒に仕事をするので、チームで仕事ができる性格の人が向いています。次には、経験を重視します。コールセンターや営業職では新卒も採りますが、ほとんどは数年の経験を積んだ即戦力の人材を募集しています。3番目は能力ですが、その中でもソフトスキルを重視します。これは例えば、交渉力やリーダーシップ、問題解決力などです。ミャンマーにはソフトスキルが高い人材はまだ少ないですが、最近はビジネススクールなどでそういった手法を学んでいる人もいます。 また、実力主義の人事方針を採っています。年に1回、スタッフの人事評価をします。能力とやる気がある人には手厚く報いたいと思います。また、社内の研修のほか、外部から講師を呼んでトレーニングも行います。職員が働くことにやりがいを感じ、長期的に務めてもらえるような職場づくりを目指しています。 できるミャンマー人が活用!「リンクトイン就活」って何? 最近、ミャンマーで就職活動に利用する人が急増しているのが、交流サイト「リンクトイン(LinkedIn)」だ。フェイスブックほどは普及していないが、若く有能なミャンマー人が続々と登録。自分の履歴書をアップして、ビジネスのネットワークづくりに利用している。 リンクトインを使って大手銀行のアシスタント・マネジャーのポストを射止めたのはヤンゴン在住のエイ・マットさん(27)。エイさんはこの銀行のポストに応募していたが、人事部からは、なしのつぶてだった。それがリンクトインで人事部長を発見し連絡を取ると、週内に面接をすることができたという。これをきっかけに就職が決まった。エイさんは「リンクトインを使えば、今まで会うことができなかった人に簡単に連絡が取れる。今では、仕事で最も使えるツールだ」と話す。 企業側がヘッドハンティングに使うケースもある。編集者のアイビーさん(28)は、リンクトインに詳しいプロフィールを載せたところ、外資系マスコミからオファーを受けて転職することになった。「オファーのメールを見て驚いた。ただ、こうした機会は今後増えるだろう」とアイビーさんは考える。 リンクトインは2003年に始まった交流サイトで、米カリフォルニア州が拠点。200か国の4億人以上が、取引相手や就職先を探すことなどに使っている。自分の写真や詳細な職歴を掲載するユーザーが多く、相手のことがよくわかるのが特徴。業界のグループもあり、共通項のある人物が容易に知り合える仕組みになっている。 人材確保Q&A どうすればいいの? フォーバル・ミャンマー 松村 健 社長 Q. まず、ミャンマーの人材市場の動向を教えてください。 A. 民政移管を受けて、日本企業などグローバル企業が実際に事業を始める段階に入ってきて、英語を話せる優秀な人材が極端に不足しています。また、求められる人材の質も上がっています。例えば総合商社などでは、タイやシンガポールのエキスパートと対等に会話ができるクラスの人材を求めています。こうした人材は少なく、欧米系を中心にヘッドハンティングも横行しています。1000ドル~2000ドルプレイヤーも出てきているうえ、さらにそれを倍の給料で引き抜こうとする動きすらあります。マネジャークラスでは、極端な売り手市場と言わざるを得ません。 日本語人材を求めるのは主に日本の中堅や中小ですが、どんどん進出して来ているので需要は大きくなっています。工場労働者については、都市部ではだいぶ枯渇して来ているので、大量採用が難しくなっています。 Q. このような状況で、日系企業が優秀な人材を確保する方法は。 A. 近道はないでしょう。まず、企業としてのポリシーや、グローバル企業であることなどをしっかり伝えることだと思います。また、研修制度や評価制度を明確にして、会社で働くことの魅力を感じてもらうことが大切です。人材紹介業者を使うのなら、人材のスペックの優先順位をはっきりさせたほうが良いですね。 ここ1年ほどで、独自の会社説明会を行ってテストや面接をする企業も出てきています。技術系など求める人材がはっきりしている場合には有効だと思います。新卒採用は教育が必要になりますので、話が通じやすい日本語人材や技術系がメインでしょう。また、求職者がネットで仕事を探すようになっています。業者がインターネットで求職者の履歴書を集め、まとめて販売するシステムもあるので、利用するのも一つの方法ですね。